皆様こんにちは。2018年11月にタイの移転価格税制が改正されました。移転価格税制というものに馴染みがない日系企業に訪問すると、自社には関係がない、タイ人の経理マネージャーが上手くやっているというような話を聞くことが多いですが、本当にそうでしょうか。
移転価格税制とは、企業グループ間取引の価格の適正性を検証するものです。
親会社と子会社の関係では、親会社が株主であり、子会社の経営に容易に指示を出すことが可能です。第三者に100円で売っているものについて、子会社に120円で買ってもらったり、80円で買ってもらったりと値段を好きに決めることができます。
ここで問題となることは、親会社の指示により、親会社に利益を付けることも子会社に利益を付けることも、どちらも可能となることです。日本国内であればどちらに利益を付けたとしても、結局は日本に税金(利益×税率)が落ちます。ただし、タイに展開している企業であれば、タイに利益を落とすことも、日本に利益を落とすことも、親会社の指示により容易に行うことができてしまうのです。
※タイの税務当局と日本の税務当局による税金の取り合いが始まります。
※タイの税務当局と日本の税務当局による税金の取り合いが始まります。
昨今、「パナマ文書」など、軽課税国を利用した租税回避が国際的に問題となっています。軽課税国に利益を付け替えるために、軽課税国から日本本社(又は協力会社)に請求書を発行して、軽課税国の売上を確保するのですが、その請求書に記載された売上金額が「本当に適正ですか?」ということを、移転価格税制により検証するのです。※ちなみに、そのビジネスに「実態がありますか?」と検証するのがタックスヘイブン税制となります。
移転価格税制により、適正とされている金額は上記の例においては、「100円」です。
自社グループが決めた価格ではなく、第三者との取引において利用している価格がその取引の適正価格となるのです。これが移転価格税制の本質的な部分です。
【本質的な部分】①自社グループ内の値付けは親会社が自由に決めることが可能(問題点)②価格の検証は第三者が利用している価格によって検証(検証方法)③グループ内の価格と第三者の価格に差異があれば、その差額に対して課税(課税方法)
移転価格税制の本質的な部分に関しては、上記の通りですが、なぜ世界的にこれだけ騒がれているかというと、一回一回の追徴税額が破格になることが非常に多いためです。これが企業の実害です。
価格に踏み込んだ指摘をされるということは、ビジネスそのものを指摘されると言っても間違いではありません。例えば、皆さんの親子間取引の金額について利益10%の更正を受けたとしましょう。親子間の売上が1億バーツだっとしても、課税所得に与えるインパクトは1,000万バーツにものぼります。これが5年間遡られたら5,000万バーツ、この5,000万バーツの課税所得に過少申告加算税及び延滞税等を加えた実効税率(約60%)で計算すると、タイにおいては3,000万バーツ程度の税金を追加で払わなければなりません(税金の額が3,000万バーツです)。製造業であれば3~5%、商社であれば5~10%程度の所得更正が行われることが多いように思いますので、概算でも良いので自社の税金へのインパクトを計算してみてください。
移転価格文書の作成とは、自社がこう考えているという「(価格の適正性の)法解釈」を税務当局に示すものであります。文書作成の対象となる企業が移転価格文書を作成していなければ、税務当局からの価格の指摘を反証することが難しくなります(その他、文書を持っていなければ20万バーツの罰金はいずれにしても発生してしまいます)。追徴税額が多額になる傾向にある移転価格税制による指摘リスクを減らすために、タイの経理マネージャーだけではなく、親会社や会計事務所などと協力することが必要になります。
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